第76章

白井遥奈は一瞬きょとんとした。

「……何のことですか。心配だから朝ごはんを作っただけですし、疲れるなんて思ったことありません」

「俺が聞いてるのは、そこじゃない」

冷えた瞳を向けられた途端、白井遥奈の鼓動が跳ね上がる。

好きだ。

けれど――怖い。

この男には、人を黙らせる圧がある。優秀で、だからこそ危険。

平気なふりをしながら、保温の弁当箱を握る指に力がこもった。

「もしご迷惑なら、もう持ってきません。でも、ほんとに……他意は――」

「降りろ」

田中辰哉の声は異様なほど淡々としていた。

白井遥奈は唇を噛み、車を降りる。

走り去る車を見送って、眉根が寄った。

――まさ...

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